
リコーのコンパクトデジタルカメラの名機「GR」の三代目「
GRV」が3月下旬に発売となるそうです。
デジタル世代となってからの私のカメラ病のきっかけは、中学生の時に買ったカメラ「XR500」についていたオールドレンズ「リケノン50mmf2.0」を現代のペンタックス「K-50」で使用することから始まったわけですが、その「XR500」のメーカーこそが「リコー」でした。
当時、ペンタックスの旭光学とは全く別の会社であった「リコー」ですが、一眼レフカメラを発売するにあたり、ペンタックスのKマウントを採用したことで、現在もペンタックスが使い続けるKマウントとの互換性があったのです。

後にリコーがホヤと合併したペンタックスのデジタルカメラ事業を買収したということもあり、私にとっては「リコー」&「ペンタックス」は特別な思い入れがあり、デジタル時代にペンタックスの「K-50」を手にしたことで、当然のように「GR」の存在も気になるものでありました。
ですが、結局私は「GR」を買うことはなく、別の方向で尖っていたシグマの「DP3 Merrill」をチョイスしました。

どちらもAPS-Cサイズの大型センサーを持つコンデジですが、決定的に違っていたのはその画角です。
「GR」が35ミリ判換算で約28mm相当という広角寄りの標準画角であるのに対して、「DP3 Merrill」は35mm換算で約75mm相当という中望遠マクロで、視野の極一部分を切り取ることに意義を見出していた私に響いたのです。
ちなみにシグマのMerrillシリーズには、「GR」と同じ35ミリ判換算で約28mmという「DP1」と35ミリ判換算で約45mmという「DP2」がありましたが、私は敢えて「DP3」をチョイスしたわけです。
今現在も、「DP3」には強く惹かれていますが、「DP1」「DP2」についてはそうでもないので、私にとっては中望遠であることが大事だったのでしょう。
ところが、同じ広角寄りの35ミリ判換算約28mmのリコー「GR」には、少し惹かれるのです。
それは何故か?
そもそも、リコー「GR」はシグマのカメラとは全く性格が違うのです。
「GR」を形容する「究極のスナップシューター」という言葉がすべてを物語っています。
それは、ポケットに入るコンパクトさ、すぐに撮影できる起動の速さ、片手で操作できる操作性といったスナップ写真を撮影する上で痒いところに手が届くあらゆることが考慮されたカメラだということ。
カタログ上では伝わらないスペックが「GR」にはあるようで、実際に使用するユーザーが絶賛しているのが特徴に思えます。
なので、私が気にならないわけがないのですが、ここ最近は、初心を忘れてフルサイズやら高機能な新製品にばかり目が行っていたので、「GR」を振り返ることはありませんでした。
でも、最近はがっつり撮影に出掛ける機会がないこともあり、持ち出さない高機能カメラに疑問を持ち始めており、カメラの原点なんてことも思うこともある中で、「GRV」の存在が目に止まりました。
これまで、「GR」の作例として目にしたものにはモノクロのイメージが強くて、どうもピンと来ていませんでした。
モノクロって何となく良い雰囲気に見えてしまうこともあって、すごく難しいと感じています。
なので、「GR」ユーザーの中には、全然良いとも思えない写真をモノクロ化で雰囲気だけに酔ってる人が多いように感じていました。
もちろん、これって「GR」だけじゃなくて、富士フィルムなんかのユーザーにも多いと思いますが…。
また、モノクロが難しい以前に、私の場合は35ミリ判換算約28mmという広角の画角そのものが難しいということがあります。
35ミリ判換算約28mmというのは、人の視野に相当する画角らしく、目に見えている全てのものを捉えているわけで、印象ある写真を撮るのってとても難しいと感じるのです。
なので、つい望遠でモノにピントを合わせてしまうのです。
スナップ写真なので、パシャパシャ気にせず撮れば良いのでしょうが、割と考えながらッシャッターを押してしまう傾向にある自分には、駄作しか撮れない気がしてしまうのです。
だからこそ、GRで撮影技術が上がるなんてこともあるのかも知れませんけど。
でも一方で、その人の視野に相当する画角っていうのは、スマートフォンのカメラと同じ画角だという側面もあります。
ということは、「GR」ではスマホのカメラを置き換えることが可能になるのだろうか?
また、その逆も然りです。
もちろん、スマホはカメラの為だけにあるのではないので、スマホを持たない選択肢はないのですが、だからと言って、スマホのカメラで完結することも無いと思われます。
現在、非常に好感をもって使用しているHUAWEIの「Mate20Pro」について言うと、素晴らしい写真が撮れる上に、画角も超広角、標準(広角)、望遠(3倍)とチョイスできて、RAWファイルでも保存できますから、カメラに取って代わっても良いような気がします。
実際に、カメラの出番が減っているとも感じます。
でも、私が完全に移行できないのは単にセンサーサイズによる思い込みだけなのかも知れません。

「Mate20Pro」の場合は、物理的に3つのレンズが存在していて「プロ」モードだと光学的にレンズを切り替えることで未だ現在のカメラに近いと言えますが、グーグルの最新スマートフォンである「Pixel3」の場合は、ひとつのレンズで撮影した画像を加工のみで仕上げることから、更に別次元のもののように感じます。
こういう記事がありました。
カメラはもう「脳」なしじゃ語れない:コンピュテーショナル・フォトグラフィーって知ってる? − GIZMODOまた、同じGIZMODOの「GRV」発売を知らせる記事では…
リコーの単焦点コンデジ「GR III」がやってくる。3月下旬にやってくる − GIZMODO
デジタル後処理じゃない。レンズ由来のシャープさを求める皆さまへ。という印象的な言葉で始まっています。
スマホの写真は後から加工されたものであることは充分に理解の上ですが、従来のHDR機能や先日発表されたオリンパスのプロ仕様フラッグシップである「OM-D E-M1X」の手持ちハイレゾショットなんてのも、進化した瞬時の合成機能なわけで、スマホと同じような機能とも言えます。
進化と共に、こういう機能がどんどん取り入れられていくといろんな境目が無くなっていくのでしょうね。

デジタルの世界では、目の前の景色を再現することだけを目的とするならば、手段は関係なくなるのかも知れません。

スマホの疑似ボケ機能だって、違和感のあるうちは偽物と言われますが、それが寸分違わず再現できていれば、もはや見分けること自体が不可能となって、偽物と言われることも無くなるでしょう。
誰もが簡単に再現できるのであれば、偽物も本物も無く、そこにプロもアマチュアもありません。
趣味性も無くなって単なる当たり前のツールでしかなくなるとしたらカメラって何なのでしょう?
まぁ、極端な発想ではありますが、将来的にはレンズの光学性能に依る現在のデジカメでさえ、フィルムカメラ同様に味を求める趣味だけのものとなるのかも知れません。
すっかり脱線してしまいましたが、今は未だそこまでの時代ではないわけですし、「GRV」の「デジタル後処理じゃない。レンズ由来のシャープさ」の魅力は、結局使ってみないとわからないのかな・・・。
撮影技術の伴わない一眼を整理して、初心に帰るのも“アリ”なのかも知れません。