運転する資格が無いとしか言えない最悪ドライバーにより、背骨骨折による脊髄損傷で下半身麻痺となってしまっているわが家の次男ですが、何とか回復したいという希望を胸に、リハビリへ強い意思で臨もうとしています。
下半身麻痺という現実に、私と奥さんは、事故直後からインターネットで情報を漁る日々でした。
そんな中で、奥さんは札幌医科大学附属病院で行われている再生医療の記事を見つけ、次男の友人も例を挙げて次男のLINEに情報を寄せてくれていたようで、そのスクリーンショットを次男が送って来ていました。
しかしながら、その時点では、私はその再生医療の現実を既に把握していました。
というのも、次男が一般病棟に移動した際に、看護士さんから札幌医科大学附属病院で行われている再生医療は、より重症度の高い頸椎損傷者に限定されていることを聞かされていたのです。
どうして?とやり切れない思いがある反面、その再生医療を受けるには、2週間以内に札幌へ転院する必要があったりで、かなりハードルが高いことは事前にわかっていたので、諦めることはそう難しくはありませんでした。
現在入院中の病院の担当医師に尋ねても、再生医療については明るい情報は無く、どちらかといえば否定的な考えのようです。
それもそのはずで、再生医療で検索したら、効果の怪しい情報がたくさん出てきます。
もちろん、保険適用外で、1回100万円以上の治療が並びますが、治療したケースとして並ぶのは、よくある健康食品のような本当かどうかわからない情報です。
ではなぜ、札幌医科大学附属病院の再生医療は違うのか?
調べていく内に、理由がわかって来ました。
先ず、札幌医科大学附属病院で行われている再生医療は、「脊髄損傷に対する再生医療等製品「ステミラック注」を用いた診療」とされており、厚生労働省より条件および期限付き薬事承認を得ています。
ステミラック注は、患者の骨髄液に含まれる間葉系幹細胞を培養することによって製造する再生医療等製品であり、これを患者に点滴により注入するのです。
この治療法は、通常の保険診療の対象となり、高額療養費制度を受けることができるのですが、それも期限付き薬事承認のおかげです。
通常、治験の場合はその充分な結果を基に薬事承認されるわけですが、この治療法については、7年という期限で先行して承認を降ろし、その間に充分な治験結果を残せというものなのです。
その承認の根拠となったのが、おそらくこちらの事例だと思われます。
脊髄損傷への画期的な治療法が登場!常識をくつがえす再生医療 ― NHK非常に効果の期待できる治療であるものの、医薬品メーカーのニプロ株式会社と共同開発した再生医療等製品「ステミラック注」は、その価格が1,500万円らしい。
更に問題なのは、 当面は年間製造能力が最大100人分程度であり、その製造コストが現在は3,000万円で、ニプロは製造コストを大幅に圧縮しなければ事業として成り立たないということになります。
そんな状況であるから、治療を受けることが出来るのは重症度の高い頸椎の損傷に限られ、様々な条件をクリアした患者のみということになるようです。
では、他に次男に適用できる再生医療はないものだろうか?
そして、探している中で、大阪大学による「自家嗅粘膜移植による損傷脊髄機能の再生治療」という先進医療を見つけました。
これは、再生することが確認されている鼻腔内に存在する嗅粘膜組織を内視鏡で摘出し、細かく刻んで脊髄の損傷部分に移植するという治療法なのですが、なんと今年の6月で先進医療で無くなったようです。
目立った効果が見られなかったようで、大阪大学ということで、我が家からも近くて期待したものの、残念ながら次男の救世主とはなり得ませんでした。
しかしながら、再生医療は新しいフェーズに入って来ており、目覚ましい進化を遂げて来ています。
そして、私が最も期待するのがiPS細胞です。
昨年12月、慶應義塾大学病院が、世界で初めて、ヒトiPS細胞由来の神経前駆細胞の脊髄損傷患者への移植に成功したのです。
世界初、iPS細胞を用いた脊髄再生医療の実現へ ー 慶應義塾大学医学部・医学研究科現在は損傷直後の急性期の患者が対象ではありますが、より患者数の多い慢性期の患者への研究を優先するということのようで、期待を持たずにはいられません。
治療が困難とされてきた慢性期脊髄損傷治療に新たな光―細胞移植単独治療で運動機能回復― ー 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)また、現在は他人のiPS細胞由来であるのですが、2025年を目標?に、患者本人のiPS細胞由来を100万円程度で行えるようにしたいという事のようなので、どうしても期待してしまいます。
とはいえ、昨年の世界初という移植手術についても、手術自体が成功したことの報道はありますが、移植手術による効果については経過後の別報告ということのようで、未だ明らかになっていないので、喜ぶには時期尚早です。
しかしながら、確実に再生医療は進歩していると感じられるので、今後10年で環境は劇的に変わる可能性も秘めていると感じています。
ですが、現実に目を向けると、次男に対しては、未だこれという確立された治療法はなく、少しでも回復できるようにオーソドックスなリハビリを頑張るしかありません。
そのリハビリでも、HALというロボットスーツを利用する方法もあるようで、リハビリテーションシーンも変わって来ているようです。
装着型サイボーグHAL ー サイバーダインただ、残念ながら、こちらも脊髄損傷を含まない8疾患のみ保険適用とのことで、効果が見込めても環境は厳しいようです。
転院先の回復期のリハビリテーション病院を選択する上でも、悩みごと真っ最中という感じです。

追記:ミューズ細胞という別の希望も・・・
「ミューズ細胞」再生医療製剤、早期承認認められず 東北大病院で治験 ー 河北新報